Good-by Seventeen

どうなってんだよ

蒼太郎を偲ぶ

自分の愛用している物に名前をつけると良いらしいと、何年か前に読んだ本に書いてあった。

名前をつけると物と心が通じて、その物が良い働きをするそうな。

交通事故に巻き込まれて車は大破したのに運転手は無事だった。聞けば車に名前をつけて大事にしていたらしい~みたいな。


いやいやいやいやガセ~~~スピリチュアルゥ()~~~ってなるかもだけど、読んだ当時なんか良いなって思ってからずっと、私も大事な物に名前をつけるようにしてる。


前に使っていたiPodは千鶴、最近あんま使わないけど電子辞書は桃瀬、前のスマホは蒼次郎。

2年前に買ってからずっと、何かつけたいな~って思いつつなかなか決められなかったギターの名前は最近やっと彰太に決まった。桑ちゃんに憧れて買ったギブソンレスポールだから。



私が1番最初に名前をつけたのは、その当時使っていた初めてのスマホ。青いSONYXPERIAに蒼太郎と名付けた。


良い働きをするかどうかはさておき、なるほど名前をつけてみると確かに愛着は湧いてくる。

うっかり独り言で口に出しちゃうくらいには、心の中で名前を呼んだり声をかけたりしてた。(今思うととても怖いね?)




それなりに大事に使ってたんだけど、1年を過ぎたくらいのある日、蒼太郎の電源がつかなくなった。
充電が満タンでも、一瞬光ってまたオフになる。


ドコモショップに行って調べてもらうと、容量いっぱいだか使いすぎだかで故障しているとのことだった。低価格で全く同じものと交換できると言われたが、問題はそこじゃない。




蒼太郎が壊れてしまった。

同じものと交換してもそれは蒼太郎じゃない。




電源もつかないので、中のデータを取り出すために分解しなければならず、そのため元の機器は手元に残すことができないと言われた。



私は半泣きだった。ドコモショップで。
なんならほぼ泣いていた。



あんなに大切にしていた蒼太郎が、もう使えない。
おはようからおやすみまで一緒だった蒼太郎が、私のせいで、分解されて、中身を取り出され、戻ってこない。


まさに一人お葬式状態。涙目。ドコモショップのお姉さんと話す声も震える。明らかにお姉さん引いている。当たり前だ。


データがなくなるのはものすごく困るし、うんともすんとも言わないスマホを持っていても仕方ないので、結局交換してもらうことになったが、スマホの交換であんなに辛い思いをしたのは、あの時が最初で最後だろう。




お姉さんが、

「あの、本体は無理なんですけど、これいりますか……?」

と気を遣ってくれて、蒼太郎のバッテリーと本体のカバーをくれた。
今思い出すととっても恥ずかしい。
ありがとうお姉さん。優しいね。珍妙な客でごめんね。



それから私は、半消費物であるスマホに過剰に愛着を持たないことにした。交換してもらった全く同じの新しいスマホには、蒼太郎を偲んで蒼次郎と名付けたけど、前みたいに気持ち悪いほどの愛着を持たなかった。今使っているスマホには名前もつけていないし、カバーも無しで傷だらけだ。







お姉さんからもらった蒼太郎のバッテリーとカバーは今も部屋の本棚に置いてある。